どんなに君の前で綺麗事いったって
結局ぼくは
昼間はただのフリーター
ウェイターじゃ意味がない
客の奴隷だ
バイトしなきゃ生活できないし
だれがどうみても格好のつかない
情けない男であって
ひとりでバンドで
ひとりでTHE安全ピンだ
とかいい吐いて
まくらは遠い街にいったし
結局あの娘を傷つけたりしたし
もう2度と会えないかもしれないし
だれひとり守れなかったし
家賃は払えず滞るし
ノルマは払わなきゃいけないし
バンドメンバーは見つからないし
ビアガーデンで飲むような
金も時間もないから
急いでベンチで缶ビールを飲んでるし
汗だくで自転車を漕ぐ
ギリギリにタイムカードを切る
愛想笑しながら謝る
パートの人たちに
誰かの目を気にしながら
社員の目を気にかけながら
明日のライブの告知を
Twitterに書き出す
掃除しにいくふりで便所にいく
鍵をかけてそのまた次のライブ告知
朝と夕方の気温しかしらないまま
冷房の効いた休憩室を後に
缶ビールを2本飲んだところで
ベッドに飛び込む
君のことを想ったり
明日のことを考えたり
未来のことを想像したり
過去のことを振り返ったり
しながら眠れば
あっという間に朝で
汗だくで自転車漕ぐ
ところからまたはじまる
バイトさきの高校生の女の子が
あずまさん
バンドやってるんですよね?
すごいです、かっこいいですね
って言ってきて
なんていうかぼくは慣れていた
そういう風に上辺でいわれたり
簡単な話題作りにされることを
よくあったし慣れてた
そんなことないよ別に
かっこよくなんてないよ
と返した
いつものようになんとなく
当たり障りなく
何も触れられないように返した
すると彼女から
今までとは違う返事がかえってきた
わたし歌手になりたいんです
といってきた
ぼくは内心少しだけ驚き
なんだか感動して
それでもバレないように返事をした
そうなんだ、なんか
ライブとかしないの?
って聞いたら
緊張して無理なんです
自分に自信がなくて
オーディションにもライブにも
でれないんです
そんな風なことをいっていた
だから人前にたって音楽やってる人が
すごくかっこいいんです
おれはうたはうまくないしめちゃくちゃだし
君が気にいるような音楽じゃないよ
といったら
それでもステージに立ってることが
すごいんですかっこいいんです
ってそんなことを言われた
おれはなにもいえずに
やればできるよ
やりなよ
音楽が好きなんだったら
歌手になりたいなら
それしかいえなかった
そんな当たり前のことしか
彼女はそんなつもりはないんだろうけど
ぼくはなんだか勇気づけられた気がして恥ずかしくて嬉しくて
彼女のことがとても愛おしくなった
それぞれの理想や夢や寂しさを
抱えて彼女は生きていて
ぼくは少し恥ずかしくなって
家に帰って行った
悔しいんだよ
毎日毎晩悔しいよ
うたをうたいはじめてから
ずっとずっとずっと
悔しいよ、ぼくは
時に誰かに馬鹿にされたり
時にガラガラのライブハウスだったり
それでも
大好きで楽しくて仕方なくて
ギター持ってうたってきたんだ
大好きな先輩もいて
可愛い後輩もできて
でもおれなんもできてない
なんも成し遂げられてない
親に見せる顔がない
ただステージにたって
うたってるだけなんだ
そんなのだれでもできんだ
ねぇ、君にも別にできるんだよ
とっても嬉しかったんだけど
できるんだよ絶対
もしかしたら君の方が
よっぽどお客さんも呼べるかもしれん
とかなんとか考えながら
いつだってぼくは
ステージに立つことを夢見てる
大きいや小さいは関係ない
全然関係ない
どうでもいい
今もぼくはあの時と同じ
ましてや君と同じかもしれない
違うかもしれない
いや、圧倒的に違うんだけど
それでもいつか
ぼくもステージに立って
歌いたいと思った日から
ずっとずっと
今日まで
バンドをやりたい
ってそれだけを考えてやってきた
きっと明日は
きっと来月は
きっと来年は
毎日そんなことばっかり考えてた
答えのない日々を手探りしてる
夢みてるんだよ
いまもまだ
これからもずっと
暑い日が続きますが
君がゆっくり
気持ちよく
眠れますように
明日も明後日も
ずっとずっと
生きられますように
ぼくはなんにも諦めません