唄をうたっていたかったの。
あの時からずっと
それだけを考えていた。
気がつけばエレキギターを持っていた。
はじめから持っていたのは声だけだった。
唄うことが好きだった。
辛いことや苦しいことがあった。
たくさんあった。
それでも一瞬でも
大きな声を出せば
全てが包んでくれた。
あれから
もうどれくらいたっただろうか。
いつの間にか
知らないうちに
バンドをやるようになった。
それまでは誰かが弾くピアノにあわせ
たくさんの仲間と声を合わせていたの。
バンドがやりたかった。
それに憧れていた、
声や大きな音でギターの音を出すことが
この上なく楽しかった。
別れたキミといるよりもだったかも。
うたいたい。
今よりも自由になりたい。
飛んだり跳ねたりして
歌いたい。
歌いたいだけを
ただそれだけを
それだけを求めて
歌いたいだけに
うたうことをやめたこともあった。
ここまで来てしまった。
他にはなんにも見当たらない。
どこをどんな風に思い返しても
僕が思っていたのはそれだけだった。
いつか時を重ねるにつれて
なにかに飲み込まれそうになって
それすらも忘れてしまいそうな夜は
何度もあった。
当たり前だ。
いや、当たり前なんかじゃないか?
それはまぁどっちでもいい話か。
あの時にあの部屋の
重い扉を開けていなかったら
きっと僕はなにもしていなかったろう。
なにもできていなかっただろう。
すごいんだね、音楽って。
どこまでも僕を連れ出すんだ。
神様だったら見えるのかしら?
耳を塞いで
音楽を眺めていたい。
いまその答えはわからないまま。
音楽の食感も味も
手触りもわからないまま。
いや、答えは別にないものだから
いいんだ。
ぼくは確かに見えているし
ぼくの眼の先にある
音楽を。
あの日から
13才からずっと
唄をうたっていた。
ただそれだけだった。
好きなんだ、うたうことが。
理由なんてそれだけだよ。
行こう、その先に
僕は生きたいだけだ。
可愛いパプリカとぼく。
札幌は雪が降ってきたよ。
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